インドネシアのワナハ農園で栽培されたロングベリーコーヒーを行きつけの自家焙煎珈琲店のマスターが中煎りと中深煎りで焙煎したので飲み比べた。
ロングベリーコーヒー
今回いただいたコーヒーの産地は、インドネシア・スマトラ島の北スマトラ州ダイリ県シディカラン地区にあるワハナ農園。
ワハナ農園では、「250ヘクタールにも及ぶ農地で栽培されているコーヒーがすべて農薬や化学肥料を使わずに育てられている」(※1)。250ヘクタールの広さはざっくりいうと、東京ドーム54個分、東京ディズニーランドの5倍の広さに相当する。
※1 海ノ向こうコーヒー(https://uminomukou.bcart.jp/product.php?id=569)(2023年7月4日閲覧).
精製方法
スマトラ島といえばマンデリンが有名(上の写真)
マンデリンは、果実(コーヒーチェリー)の精製方法が特徴的で、生豆の状態で乾燥させるスマトラ方式という生産処理がなされている。スマトラ方式によって精製されたコーヒー豆は、独特の力強い香りと深いコクが引き出されると言われているが、意見は分かれるようだ。
ジェームズ・ホフマン(2020)は、「(スマトラ方式については)コーヒー業界内に根強い反対意見がある。コーヒー本来のフレーバーよりも強すぎて、[中略]インドネシア産コーヒーの本来の味を感じることができないという声も多い」とし、「インドネシア産にはウォッシュド方法で精製したコーヒーもあるので、ぜひ探し出して味わってほしい」と述べている。(※2)
※2 ジェームズ・ホフマン/丸山健太郎監修(2020)『ビジュアル スペシャルティコーヒー大辞典 2nd Edition』日経ナショナル ジオグラフィック社「スマトラ式」37頁
ロングベリーはウォッシュド精製
ワハナ農園のロングベリーは、スマトラ方式ではなく、ジェームズ・ホフマンが勧めているウォッシュド方式で精製されている。
これは期待がもてそうだ。
豆の特徴
ロングベリーは「エチオピア由来で、ティピカ系のハラーロングベリーと近似した栽培品種」(※3)で、名前のとおり細長い。小粒のピーベリー(丸豆)と比べると、2倍近くの差がある。
※3 US FOODS「インドネシア ワハナ農園ロングベリー ウォッシュト」(https://usfoods.co.jp/shopping/view.php?id=1209)(2023年7月2日閲覧).
今回は、中煎りで焙煎したロングベリーと、中深煎りで焙煎したロングベリーの二種類をいただいた。上の写真の左側が中深煎り、右側が中煎り。中深煎りに比べると中煎りのほうが色が薄いのがわかる。
中煎り
上の写真は、中煎りで焙煎したロングベリーのコーヒー豆。薄い焦げ茶色をしている。日本の伝統的な色でいうと、江戸茶(えどちゃ)に近い。
中深煎り
こちら(上の写真)は、中深煎りで焙煎したロングベリー。色は焦げ茶。中煎りと比べると色の濃さは一目瞭然だ。それにしても豆が細長い。
それでは、中煎りと中深煎りを飲み比べてみよう。
中煎りの特徴
ハンドドリップ
上の写真は、中煎りで焙煎したロングベリーをマスターがハンドドリップする様子。粉のふくらみは若干弱いが、きれいにゆっくり均一にふくらんでいく。
味の感想
まずはひとくち。すっきりした飲み口だ。かすかに柑橘系の酸味を感じる。果物の香りにたとえるならオレンジ。後半になると、黒糖のような甘みが出てきた。
ロングベリーの中煎りは、「軽くてさわやかなコーヒ」ーだった。
中深煎りの特徴
ハンドドリップ
こちら(上の写真)は、中深煎りのロングベリーをハンドドリップする様子。粉のふくらみが、中煎りと比べると大きいのがわかる。
味の感想
続いて中深煎りをいただく。ひとくちめは、ほのかな苦みを感じる。ふたくちめからは、ブドウのような酸味が出てきた。まろやかな飲み口だ。最後は、ダークチョコレートを思わせるコクをともなった甘みに変わった。
ロングベリーの中深煎りは、「まろやかでコクのあるコーヒ」ーだった。
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後記|マンデリンとの味の比較
今回いただいたロングベリーと、以前飲んだマンデリンは、ともに産地はインドネシアのスマトラ島。
スマトラ式で精製されたマンデリンは、芳醇なコクだが、土臭さを感じた。この土臭さを「おいしい」と感じるか「まずい」と感じるかが、好みの分かれるところだろう。
ロングベリーは、スマトラ式ではなく、ウォッシュドと呼ばれる水洗式で精製されているので、マンデリンのような土臭さはなかった。
マンデリンは個性的、ロングベリーは優等生、といったところだろうか。
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取材場所
本記事の取材場所は越谷市下間久里(しもまくり)にある行きつけの自家焙煎珈琲店・珈家(かや)。写真は珈家のカウンター席で許可を得て撮影させていただいた。
参考資料
本記事を作成するにあたって、引用した箇所がある場合は文中に出典を明示した。参考にした文献は以下に記す。
・成美堂出版編集部(2015)『珈琲の大辞典』成美堂出版.
・西東社編集部(2017)『極める 愉しむ 珈琲事典』西東社.
・ジェームズ・ホフマン/丸山健太郎監修(2020)『ビジュアル スペシャルティコーヒー大辞典 2nd Edition』日経ナショナル ジオグラフィック社.
・アネット・モルドヴァ著/丸山健太郎監修(2021)『新版 THE COFFEE BOOK』誠文堂新光社.