ブラジルの試験栽培品種イバイリ(IBAIRI)というコーヒーを行きつけの自家焙煎珈琲店で飲んだ。豆の焙煎度は中深煎り。ブラジリアンモカとも呼ばれる。モカ系の酸味と甘味の余韻が長く残るまろやかな味が特徴のコーヒーだった。

イバイリ(IBAIRI)

焙煎したコーヒー豆|イバイリ(IBAIRI)

イバイリ(IBAIRI)は試験栽培品種。販売元のセラード珈琲によると、「『イバイリ』とはブラジルのグアラニ・インディアンの言葉で『甘い小さなチェリー』という意味です。モカ種とティピカ種を交配させ、さらにブルボン種を掛け合わせた品種です。葉は細長く、実はほとんどつかないため収穫量は非常に少ない」(※1)という。
 
今風にいえばハイブリッドなコーヒーといったところか。

※1 セラード珈琲「IBAIRI(イバイリ)」(https://www.cerrad.shop/view/item/000000000133)(2023年2月18日閲覧).

生産地

今回いただくイバイリの生産地は、ブラジルのミナスジェライス州セラード地域。農園はサン・ジョン農園。
 
セラードは『熱帯サバンナ』という意味。この地域はコーヒー産地としては比較的新しく、大規模で機械化の進んだ農園が占有している。実際、この地域の9割以上の農園は、10ヘクタール以上の土地を所有している。標高は 850~1250メートル」(※2)

※2 ジェームズ・ホフマン/丸山健太郎監修(2020)『ビジュアル スペシャルティコーヒー大辞典 2nd Edition』日経ナショナル ジオグラフィック社「ブラジル」203頁

豆の特徴

ブラジル イバイリ コーヒー豆|中深煎り

豆はひじょうに小粒で丸みを帯びている。豆の大きさ(スクリーンサイズ)は、12~13。ブラジルでは輸出できるのは、スクリーンサイズが 16以上の豆とされているので、イバイリは、特殊な例といえる。
 
とにかく小粒。マスターの話では、「納豆にたとえるとイバイリはひきわり納豆」とのこと。まさに言い得て妙。

焙煎度は色で判断

通常、コーヒー豆を焙煎すると、ポップコーンがはじけるようなパチパチという音(破裂音)がする。これを「ハゼ」と呼ぶ。ハゼには最初に起こる「1ハゼ」と、二回目に起こる「2ハゼ」があり、焙煎度はハゼを基準に判断する。
 
今回のイバイリは極小豆なので、ハゼを基準にしてしまうと、豆が黒焦げになってしまうので、「焙煎度は焼き具合の色を見ながら判断した」と、マスターが教えてくれた。

豆の大きさを比較

コーヒー豆の大きさの比較

豆の大きさを比較してみた。上の写真の左側がイバイリ。スクリーンサイズは 12~13。右側が、ブラジルのプレミアムショコラ。スクリーンサイズは 17~18。豆の大きさは一目瞭然。左側のイバイリのほうがはるかに小さい。

ハンドドリップ

マスターがイバイリ(IBAIRI)をハンドドリップする様子を YouTube ショート動画に収めた(上の動画)。中深煎りなので、粉はモコモコときれいに膨らんでいく。自分が注文したコーヒーが抽出されていく様子を眺めるのも楽しい。

味の感想

ブラジル イバイリ コーヒー

ひとくちめは、モカ系の酸味を感じた。イバイリは、ブラジリアン・モカとも呼ばれるそうだが、なるほど、そんな風味だ。
 
酸味・苦味・甘味のバランスがいいというよりも、いろいろな香りや味が、ぎゅっと濃縮されて、それらが渾然とまじわって、まろやかな旨みになっている、そんな複雑な味だ。
 
最後はカラメルのような甘味になって、舌の先に甘味がずっと残った。
 
ひとことでいうと「複雑でまろやかな味のコーヒー」だった。



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ノリタケ フィッツジェラルド グリーン

ノリタケ フィッツジェラルド グリーン

カップ&ソーサーは、ノリタケのノリタケ フィッツジェラルド グリーン(FITZGERALD)4712。大理石調のつやのある緑色が重厚な風格をかもしだしている。落ち着いた大人のコーヒータイムが過ごせた。といっても飲んだ本人は落ち着きのない大人だが……。

後記

ブラジルコーヒー|イバイリ(IBAIRI)

イバイリ(IBAIRI)は、モカ種とティピカ種を交配させて、さらにブルボン種を掛け合わせた試験栽培品種。いってみればハイブリッドな品種だ。イバイリの原種となっているモカ種・ティピカ種・ブルボン種について調べた。
 
モカ・ティピカ・ブルボンはともにアラビカ種から派生した品種。

モカ種

コーヒー豆の二大品種・ブルボン種の突然変異種といわれている。生豆はコーヒーの栽培品種の中ではもっとも小さく、丸型をしているのが特徴。小粒のピーペリーと似ている。病気に弱く、管理が難しいので、希少な品種になっている。

ティピカ種

ティピカ種|ハワイコナ

ティピカ種|ハワイコナ

アラビカ種の二大派生品種がティピカとブルボン。エチオピア原産で「在来種」といわれるもっとも古い栽培品種のひとつ。収穫量は多くないが、上品でやわらかな酸味とコク、香りのよさが特徴。世界中で広く栽培されている。

ブルボン種

ブルボン種|ピンクブルボン

ブルボン種|ピンクブルボン

ティピカ種の突然変異種。ブラジルコーヒーの原型といわれている。豆は小さめ。ティピカよりは二~三割、収穫量が多い。濃厚なコクとまろやかな甘味が特徴。

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取材場所

本記事の取材場所は越谷市下間久里(しもまくり)にある行きつけの自家焙煎珈琲店・珈家(かや)。写真は珈家のカウンター席で撮影させていただいた。

参考資料

本記事を作成するにあたって、引用した箇所がある場合は文中に出典を明示した。参考にした文献は以下に記す。

参考文献

・成美堂出版編集部(2015)『珈琲の大辞典』成美堂出版.
・西東社編集部(2017)『極める 愉しむ 珈琲事典』西東社.
・ジェームズ・ホフマン/丸山健太郎監修(2020)『ビジュアル スペシャルティコーヒー大辞典 2nd Edition』日経ナショナル ジオグラフィック社.
・アネット・モルドヴァ著/丸山健太郎監修(2021)『新版 THE COFFEE BOOK』誠文堂新光社.