インドネシアのスマトラ島で生産されたビンタンリマ・コーヒーを行きつけの自家焙煎珈琲店でいただいた。焙煎度は中深煎り。芳醇なコクとダークチョコレートのような甘みが楽しめた。
ビンタンリマ
ビンタンリマ(Bintang Lima)の生産地は、インドネシア・スマトラ島北部のリントン・ニフタ及びパランギナン。いわゆる「マンデリン」(Mandheling)の一種。マンデリンは、インドネシアのスマトラ島の北部で採れるアラビカ種のコーヒー豆の銘柄で、リントン地区は、インドネシアでもトップクラスのアラビカ種を栽培している。
ビンタンリマ(Bintang Lima)とはインドネシア語で、ビンタン(Bintang)=星、リマ(Lima)=星。五つ星(最高品質)を意味する。
販売元の US FOODS によると、「(ビンタンリマ)は、限定されたエリアで採るので品質的なばらつきもより少なく、この地域の中でも、ビンタンリマの品質を担保できるチェリーを収穫できる小農家さん(約40農家)からのチェリーのみがビンタンリマの原料となる」(※1)という。
※1 US FOODS「インドネシア マンデリン ビンタンリマ」(https://usfoods.co.jp/shopping/view.php?id=1222)(2023年7月30日閲覧).
精製方法
精製方法は、スマトラ方式(※2)と呼ばれるスマトラ島独特の方法で処理されている。スマトラ式は、英語では「ウェット・ハル」(Wet Hulling)、インドネシア語では「ギリン・バサ」(Giling Basah)と呼ばれている。
※2 コーヒーチェリーの果肉を取り除き、1~2日間乾燥させたあと、生乾きのうちにパーチメント(内果皮)を脱穀し、再び天日乾燥して生豆にする。
豆の特徴
豆の品種はアラビカ種のティピカ。形は楕円形で、やや扁平。形はよくそっている。焙煎六日目なので、コーヒーオイルが出始めている。中深煎りなので、色は黒褐色に近い。
ハンドドリップ
マスターがハンドドリップする様子を写真に収めた(上の画像)。中深煎りなので粉もきれいにふくらんでいく。カウンター越しに、マスターのハンドドリップするさまざまなコーヒーを見てきたが、このふくらみ方は、おいしいコーヒーの特徴だ。
味の感想
まずはひとくち。マンデリン独特のスパイシーな香りがする。日本語でいうと「土臭い」感じ。この香りを「おいしい」と感じるかどうかが、意見の分かれ目だ。この土臭さを敬遠する人も多い。
中盤からは、奥深い苦味と芳醇なコクが出てきた。ほのかな酸味も感じられる。後半は、ビターコーヒーを思わせるような重厚な甘みが口の中に広がった。
ひとことでいうと「重厚な」コーヒーだった。
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ノリタケ フィッツジェラルド
コーヒーカップ&ソーサーは、ノリタケのフィッツジェラルド・グリーン(4712)。金の浮彫模様と大理石調の緑色とが重厚な風格を醸しだしている。高級感にあふれたコーヒータイムが楽しめた。
後記
ビンタンリマが生産されているスマトラ島のコーヒー事情を調べた。出典は『新版 THE COFFEE BOOK』(※3)。以下、引用・抜粋。
スマトラ島にはじめてコーヒー農園が開園したのは1888年。今では、ロブスタ種の国内最大地域にまで発展し、インドネシアの総生産量75パーセントを占めています。アラビカ種では依然としてティピカがもっとも一般的です。
スマトラ島では、水は貴重な資源のため、小規模農園のほとんどは、伝統的な「スマトラ式」で生産処理し、豆は青緑色を帯びています。残念ながら、この方法では、豆が傷んだり、見た目が悪くなったりすることもあります。引用元: 『新版 THE COFFEE BOOK』(※3)
※3 アネット・モルドヴァ著/丸山健太郎監修(2021)『新版 THE COFFEE BOOK』誠文堂新光社「スマトラ島」92頁
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取材場所
本記事の取材場所は越谷市下間久里(しもまくり)にある行きつけの自家焙煎珈琲店・珈家(かや)。写真は珈家のカウンター席で撮影させていただいた。写真掲載は許可済み。
参考資料
本記事を作成するにあたって、引用した箇所がある場合は文中に出典を明示した。参考にした文献は以下に記す。
・成美堂出版編集部(2015)『珈琲の大辞典』成美堂出版.
・西東社編集部(2017)『極める 愉しむ 珈琲事典』西東社.
・ジェームズ・ホフマン/丸山健太郎監修(2020)『ビジュアル スペシャルティコーヒー大辞典 2nd Edition』日経ナショナル ジオグラフィック社.
・アネット・モルドヴァ著/丸山健太郎監修(2021)『新版 THE COFFEE BOOK』誠文堂新光社.