江戸時代に開花した日本の珍芸・怪奇・好色見世物や見世物小屋のいかさまなどを集録したおもしろい本『見世物の歴史』古川三樹・著(雄山閣)を買って読んだ。好奇心をそそられた内容と感想を紹介する。

見世物の歴史

『見世物の歴史』古川三樹(雄山閣)

『見世物の歴史』が発行されたのは昭和45年(1970)8月15日。今から(2023年現在)53年前の古い本だが、内容がおもしろそうなので古本を買った。新本は入手困難。
 
文体は口語体で、漢字は当用漢字。むずかしい漢字にはふりがなが振ってあるので、読みにくさはない。

概要

本の概要は、◇序章(見世物の起源・勧進興行の発生・見世物の分類)◇技芸見世物編◇奇形見世物編◇細工見世物編◇江戸時代見世物風景◇明治の見世物……。序章を含めて六編から編まれている。
 
見世物の起源は、奈良時代にさかのぼり、鎌倉時代に勧進興行という形態が発生し、江戸時代に大衆娯楽として定着したが、明治初頭に制圧され、ほとんどの伝統的な見世物がほろんでいったとう。
 
江戸時代に全盛を極めた日本の見世物が二百数十枚の図版とともに解説されているので、読み物としてもおもしろいし、貴重な資料集にもなっている。

主な内容

本の帯|見世物の歴史

主な内容を以下に列挙する。どれも好奇心をそそられる。

  1. 幻術
  2. 幻戯
  3. 奇人
  4. 軽業
  5. 女相撲
  6. 珍奇鳥獣
  7. 覗きからくり
  8. 見世物小屋
  9. 性的見世物
  10. いかさま見世物
入馬鼓腹・馬腹術

「幻術」の章では、牛や馬の口から入って肛門から抜け出る「入馬鼓腹」や、牛や馬の尻からもぐって口から出てくる「馬腹術」という見世物が、図とともに紹介されている。実際に見てみたかった。

奇人見世物

奇人見世物編の主な内容を列挙する。

  1. 徳利児の足芸
  2. 一寸法師と大女房
  3. 親子三人の一寸法師
  4. 碁盤娘
  5. 三ツ足女
  6. 蟹娘
  7. 鬼娘
  8. 逆さ首
  9. 熊女
  10. 熊童子
徳利児の足芸

奇人見世物編では、不具者(※1)に行なわせた芸や見世物にされた不具者などが図とともに解説されている。
 
一例を紹介すると、見世物小屋では、徳利児(とくりご)と呼ばれた手のない不具者が、足で字を書いたり、弓を射たりする「徳利児の足芸」が人気を呼んだという。
 
奇人見世物は、江戸時代はさかんに興行されたが、明治6年(1873)6月、不具者の見世物の禁止令が東京府知事から発令され、すたれていった。

※1 不具者(ふぐしゃ)とは、先天的・後天的に身体の一部に障害がある者。現代では「不具」は、不快・差別用語にあたる。体が不自由な人、の意。

性的見世物

性的見世物の主な内容を挙げる。どれも興味津々。

  1. 女の意和戸
  2. やれ吹け、それ吹け
  3. やてかんせ
  4. 伊勢のお杉お玉
  5. 参宮
  6. 蛇遣い
  7. ろくろ首
  8. 生首
  9. ふたなりの娘
  10. きん玉娘
参宮

性的見世物は、好色見世物とも呼ばれ、江戸時代、庶民に人気の娯楽だった。
 
なかでも参宮(さんぐう)という見世物は、かなり人気を呼んだという。どんな見世物かというと、戸板のような板の上に布団を敷き、その中に男女が寝て、ときおり性交のような動作をしてみせるというもの。
 
現在のまな板ショー(※2)の先駆けといったところか。

※2 まな板ショーとは、ストリップ劇場の舞台上で、男優と女優が性交に及ぶパフォーマンスのこと。

いかさま見世物

いかさま見世物編では以下の見世物が紹介されている。

  1. 名号牛
  2. 河童
  3. 大蛇
  4. むしゃりむしゃり娘
  5. その他
見世物といえばイカサマ

いかさま見世物編では、河童と大蛇の見世物の仕掛けが図とともに明かされているほか、人気のあった、あっと驚く機知に富んだ数々のイカサマが紹介されている。
 
たとえば「べな」。「べな、べな、べなだよ」との口上で、見世物小屋の中に入ると、鉄鍋(てつなべ)がひとつ伏せて置いてあり、これを男が棒で叩きながら「ベナッ、ベナッ」と叫んでいる、というだけのもの。「なべ」を逆さまに置いたから「べな」というわけである。
 
ただ、「こうしたイカサマ見世物は、見るほうも心得ている場合が多く、『ああ、うまくはめられた』と、みずからを笑うところにおもしろみがあった。いわば、江戸っ子好みのしゃれだったのである」(※3)
 
江戸時代、イカサマは見世物の楽しさのひとつだった。

※3 出典『見世物の歴史』古川三樹・著(雄山閣)「いかさま見世物」280-287頁

読後感想

『見世物の歴史』古川三樹・著(雄山閣)

とにかくおもしろかった。どのページを開いても興味をそそられる図が載っていて楽しい。『見世物の歴史』は読むだけではなく、資料集としても使えるので、蔵書の一冊に加えることにした。
 
江戸時代に開花した見世物は、弾圧や明治の禁令などによって、しだいに姿を消していったが、現在では、紙芝居・手品・大道芸・サーカスなど、さまざまな姿に形を変えて、脈々と受け継がれている。
 
見世物に興味のあるかたには一読をおすすめしたい一冊だ。