石仏写真の撮り方が学べるおすすめの入門書を私が実際に読んだ中から3冊厳選して紹介する。撮影テクニックの解説だけではなく、石仏の写真も豊富に載っているので、鑑賞しながら石仏撮影のノウハウが学べる。

心が癒される石仏撮影を楽しむ

『心が癒される石仏撮影を楽しむ』楳村修治(日本カメラ社)

一冊目は、『心が癒される石仏撮影を楽しむ』楳村修治(日本カメラ社)。石仏の魅力を表現する撮影テクニック16項目をフリーカメラマンでもあり写真教室の講師を務める著者が撮影した写真とともに分かりやすく解説している。
 
後半の「全国私が好きな石仏撮影地20選」では、著者がおすすめ石仏撮影スポットを紹介。掲載されている写真には、どんな狙いで撮ったのかなど、具体的な解説文が付いているので、勉強になる。

おすすめポイント
  • 撮影的ニックが体系立てて学べる
  • 掲載写真を眺めるだけで勉強になる
  • 全国の石仏撮影スポットも載っている
本の中身

「石仏の魅力を表現する撮影テクニック」16項目のうち「印象的な部分をクローズアップする」という箇所を一部、抜粋・引用して紹介する。出典は『心が癒される石仏撮影を楽しむ』楳村修治(日本カメラ社)34頁

写真で表すクローズアップの作品は、目では見えない想像の世界が広がります。
 
その捉え方は様々で、表情の一部分を大胆に切り取る方法や、手の印で仏の尊い姿、お供え物の一部を入れることで、目には見えない庶民の厚い信仰が引き出せます。
 
晴れた日は、明暗差が生じて立会感が生まれるので、印象度が強くなる光の効果も見逃せません。気になる部分を大胆に写すことは、写真の持つ力を存分に発揮でき、石仏の新たな一面が引き出せるでしょう。

石仏撮影の入門書として手元に置いておきたい一冊。

石仏の楽しみ方

『石仏撮影の楽しみ方』日本石仏協会編(品分社出版)

二冊目は、『石仏撮影の楽しみ方』日本石仏協会編(品分社出版)。内容は、◇写真集◇解説(石部の楽しみ方)◇石仏めぐり11コース……の3部構成で、「石仏の楽しみ方」の「撮る」という章で、石仏撮影のポイントが六つ解説されている。

  1. 目的をはっきりさせる
  2. 写す範囲をしっかり決める
  3. 位置と角度を工夫する
  4. 光線の方向と強さを見きわめる
  5. レンズの絞り効果を活用する
  6. 写すテーマを決める

石仏撮影にはどれも欠かせないテクニックなので勉強になる。この六つを抑えておけば、カメラ初心者でも魅力的な石仏の写真が撮れる。

おすすめポイント
  • 石仏撮影の基礎知識が学べる
  • 写真を通じて撮影テクニックが学べる
  • 石仏の種類や名前も覚えられる
本の中身

「撮る」の中から「写す範囲をしっかり決める」という箇所の一部を抜粋・引用して紹介する。出典は『石仏の楽しみ方』日本石仏協会編(品分社出版)89-90頁

石仏を風景の一部として写す場合と、石仏の像容(ぞうよう)を中心に写す場合があります。前者は、石仏の周囲の環境を含め、ときには遠景も入れて、石仏を風景のなかでとらえる写し方後者は、石仏の姿や形、表情などを、全身、上半身、頭部、細部などに分けて、その石仏の像容をすべて写す方法です。

石仏撮影の解説そのものは、全126ページのうち 7ページしか書かれていないが、写真集が多いので、上記の石仏撮影のポイント(6項目)を押さえたうえで写真集を眺めていくと、そのつど新たな発見がある。

石仏に魅せられて

『石仏に魅せられて』井上清司(研光新社)

三冊目は、『写真芸術 石仏に魅せられて』井上清司(研光新社)。テレビ写真教室の司会役もつとめ、日本石仏写真家協会の会長の肩書きももつフリーカメラマンの著者が、数多くのテクニックを活用する石仏撮影の方法をわかりやすく解説している。
 
平成元年(1989)に発行された本なので、フイルムカメラ(一眼レフ)を前提に書かれているが、デジタルカメラの時代になった今でも色あせることなく、石仏撮影の入門書として読める。

おすすめポイント
  • レッスンプロ直伝の撮影テクニックが学べる
  • 石仏撮影の技法も載っている
  • 著者のあつい思いが伝わってくる
本の中身

「石仏写真は構図に始まり構図に終わる」という箇所の一部を抜粋・引用して紹介する。出典は、『石仏に魅せられて』井上清司(研光新社)162-169頁

石仏を撮影する場合、まず最初に考えるのは構図である。ただ漠然と「石仏がそこにあるから撮影しよう」というのでは意味がない。石仏のアップで画面構成をするのか、環境を重点にして、そのなかで石仏を生かす画面構成をするのかを明確にしなければならない。
 
初心者のうちは、その両方が混乱してしまい、結局、石仏も浮き上がらない、環境も生かされないという中途半端な写真になってしまう場合が多い。最初は失敗してもいいから、石仏を画面のなかにできるだけ小さく撮影し、空間をなるべく多く取り入れてみることである。

この本も手元に置きたい一冊だが、古い本なので新品は入手困難。Amazon で中古本が手に入る。

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推薦図書

新版 石仏探訪必携ハンドブック

書籍「新版 石仏探訪必携ハンドブック」

価格:
1,000円(税別)

ポケットサイズになっているので、手軽に携帯できて便利。イラストが充実しているので、石仏の特徴がひとめで分かる。
 
石塔や石仏の銘文解読の参考になる年号表、異字体、かな文字、種子(しゅじ)なども載っている。石仏撮影のときにカメラといっしょに持っていきたい一冊。
 
2011年に出版された本だが書店では入手困難。Amazon で入手できるがプレミア価格(定価の2~3倍の値段)になってしまっている。