昭和の薫り漂う日光街道沿いで、思わぬ「至福の一皿」に出会った。埼玉県幸手市内国府間(うちごうま)。どこか懐かしい響きをもつこの地で60年、地域の方々に愛され続けてきた「いこい食堂」の訪問記をお届けする。

いこい食堂

いこい食堂|幸手市

日光街道を車で走らせていると、ふと目に飛び込んできた大きな木の看板。力強い筆致で「いこい」と書かれたそのたたずまいに、吸い寄せられるようにハンドルを切った。
 
店に滑り込んだのは午後1時半。昼の部の閉店は2時。ラストオーダーは1時40分とのこと。まさに「滑り込みセーフ」のタイミングだった。

60年続く「食」の歴史

店内

のれんをくぐると、そこには期待どおりの「昭和」が広がっていた。
 
創業は昭和40年(1965年)。高度経済成長期のまっただなか産声をあげ、昨年(2025年)、60周年を迎えた。
 
使い込まれたテーブルや、どこか誇らしげに掲げられたメニュー表の数々が、積み重ねてきた月日の重みを感じさせる。
 
店内の壁を見あげると、ひときわ目を引く大きな丸型の壁掛け時計が……。
 
文字盤の擦れ具合は、創業当時から休むことなく時を刻み続けてきた証。この空間にいるだけで、まるで60年前にタイムスリップしたかのような、不思議な安堵感に包まれまれた。

食のデパート

メニュー

「いこい食堂」の魅力は、圧倒的なメニューの数。壁一面に並ぶ短冊を眺めれば、誰もが目移りしてしまうはず。
 
(定食)丼物・豚角煮・レバニラ・ホルモン焼・焼魚(麺類)そば・うどん・ラーメン(洋食)カレーライス・カツカレー・オムライス(一品料理)もつ煮・ちくわ天ぷら・ポテトサラダ……。
 
まさに「食のデパート」だ。
 
がっつり食べたいドライバーから、近所の常連さんまで、多くの胃袋を満たしてきた懐の深さを感じる。
 
あれこれ悩むのも食堂の醍醐味だが、今回は直感に従い、かつて多くの大人たちが憧れた洋食の王道「オムライス」を注文することにした。

絶品!オムライス

オムライス

運ばれてきたトレーを見て、思わず息をのんだ。
 
「これが、食堂のオムライス……?」
 
ボクらが想像する「食堂のオムライス」といえば、薄焼き卵でケチャップライスをきっちり包んだ形が一般的だ。しかし、いこい食堂のオムライスは、いい意味で期待を大きく裏切るものだった。

ハイカラなビジュアル

ハイカラ・オムライス

パラリと炒められたケチャップライスの上に、ぷっくりと焼きあげられた黄金色のオムレツが鎮座している。
 
そこにたっぷりと注がれた艶やかなデミグラスソース。さらにその上から、鮮やかな赤色のケチャップがコントラストを添えている。
 
大衆食堂のメニューというよりは、銀座の老舗洋食店で出てきてもおかしくないような「ハイカラ」なビジュアル。スプーンを入れるのがもったいないほどの美しさだ。
 
まずはひとくち。卵のふんわりとした食感と、コク深いデミグラス、そしてケチャップの酸味が絶妙に調和している。

感動の味

オムライス

添えられた味噌汁が、ここがまぎれもなく「日本の食堂」であることを思い出させてくれ、そのミスマッチさがかえって心地よい満足感を与えてくれる。
 
まさに感動の味だった。

後記

食後に再び、あの古い時計を見上げた。令和の時代、外の世界は、めまぐるしく変わっていくが、この店の中には変わらない「真心」と「技術」が息づいている。
 
60年という歳月は、たんに古いということではなく、それだけ多くの人を笑顔にしてきた証拠なのだと実感した。
 
いこい食堂。昭和の空気をそのまま瓶詰めにしたような温かみあふれる大衆食堂だった。また訪れたい。

営業情報

いこい食堂|幸手市内国府間

いこい食堂の住所は、埼玉県幸手市内国府間(うちごうま)650-3(地図)。定休日は日・月・祝祭日。営業時間は平日が 11時から14時(ラストオーダー13時40分)。土曜日は、11時から14時と、18時から21時(ラストオーダー20時30分)。駐車場は店舗前に14台分。