コーヒーの世界は奥深く、産地や焙煎度合いによって万華鏡のようにその表情を変える。今回は、そんなコーヒーの世界の中でも特に個性的な味わいでファンを魅了するケニア産「レッドマウンテン」を中浅煎りで飲む機会に恵まれた。
ケニア産レッドマウンテン
まるでフルーツトマトをかじったかのようなジューシーな酸味と、心地よく続く甘い余韻……。そんな魅力的なコーヒー「レッドマウンテン」について、その名の由来から、美味しい淹れ方のコツ、飲んだ感想、ケニアのコーヒー事情まで、たっぷりとお伝えする。
名前の由来は豊かな大地
「レッドマウンテン」(Red Mountain)という力強い名前は、このコーヒーが育った大地の色に由来する。
アフリカ大陸第二位の標高を誇るケニア山(※1)の麓に広がる「キクユ」と呼ばれる赤褐色の肥沃な火山性土壌。このミネラルを豊富に含んだ大地が、「レッドマウンテン」独特の豊かな風味と力強い味の奥深さを育んでいる。
まさに「赤い大地の恵み」が、その一杯に凝縮されている。
※1 標高5199メートル。アフリカ大陸で一番高い山はタンザニアのキリマンジャロで、標高6007メートル。
豆の特徴|輝く酸味と凝縮された果実味
今回いただくレッドマウンテンの焙煎度は中浅煎り。豆の表面はシナモン色で、シワがまだ残っているのが特徴。マスターが豆を挽いた瞬間、甘酸っぱい香りがふわりと立ち上がった。期待感が高まる。
ケニアのコーヒーは、その際立った酸味で有名だが、レッドマウンテンも例外ではない。
マスターによると「中浅煎りにすることで、レッドマウンテンが持つ柑橘系やベリー系のジューシーな果実味がよりいっそう引き立つ」という。
ハンドドリップ|おいしさを引き出す
中浅煎りを含む浅煎り系の豆は、深煎りや中深煎りの豆に比べると、コーヒーの成分が抽出されにくいという特徴がある。そのため、ハンドドリップには、ちょっとした工夫が必要。
一投目
一回目のお湯を注ぐ。お湯の温度は80度から84度。粉全体がしっとりとお湯を含むように、ていねいにお湯を注ぐ。
蒸らす
粉の表面がドーム状にふくらんできたら、20秒から30秒ほど蒸らす。この蒸らしの時間が重要。
二投目
蒸らし終えたら二投目。二回目のお湯を注ぐ。浅煎りや中浅煎りの場合、お湯を注ぐというよりも、お湯をそっと置く、というイメージで抽出していくのが、うまく淹れるコツだ。
これらのポイントを意識することで、レッドマウンテンが持つ明るい酸味と甘みをバランスよく引き出せる。
いざ実飲!気になるその味わいは?
マスターが、ていねいにハンドドリップした中浅煎りのレッドマウンテンを、まずは「香り」から楽しもう。
カップから立ち上るのは、フレッシュなトマトやカシスを思わせる、甘酸っぱく爽やかな香り。奥のほうに、ほのかにスパイスのような香りも感じられる。
ひとくち含むと、まず舌の上で弾けるのは、明るく鮮やかな酸味。まるで完熟したフルーツトマトを丸かじりしたかのような、ジューシーで甘みを伴った酸味が口いっぱいに広がった。ただ、すっぱいだけではない、質の高い、心地よい酸味だ。
温度が少し落ち着いてくると、ミルクチョコレートのようなまろやかな甘みと、しっかりとしたコクが顔を覗かせる。
飲んだあと、甘い余韻が長く続くのが印象的だった。苦みは、ほとんど感じられず、ゴクゴクと飲めてしまうような爽やかさだった。
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ちょっと深掘り!ケニアのコーヒー事情
高品質のコーヒーを生み出すケニアは、国をあげてコーヒーの品質管理に取り組んでいる。
その特徴的なシステムが「オークション制度」。国内で生産されたコーヒーの多くは、首都ナイロビにある競売所に集められ、毎週厳格なカッピング(※2)による品質評価を受ける。
※2 コーヒーの品質を鑑定するための味覚審査。香り・甘さ・酸味の質など、さまざまな面から評価する。テイスティングとも呼ばれる。
そして、その評価に基づいて世界中のバイヤーが豆を競り落としていく。この厳しい競争があるからこそ、ケニアのコーヒーは高い品質を維持することができている。
また、ケニアのコーヒーは、豆の大きさ(スクリーンサイズ)によって厳密に格付けされている。最高ランクは「AA」。それに次ぐ「AB」。日本に輸入されるのもこれらの高品質豆がほとんど。
後記|コーヒーで旅するアフリカの大地
ケニア産レッドマウンテンの中浅煎りは、「コーヒーは苦いもの」というイメージを覆してくれる、まるでフルーツジュースのような一杯だった。
そのユニークで鮮烈な味わいは、一度飲んだら忘れられないインパクトがある。
- フルーティーで酸味のしっかりしたコーヒーが好き
- 普段とは一味(ひとあじ)違ったコーヒー体験をしたい
- スペシャルティコーヒーの世界に足を踏み入れたい
こんな方に、おすすめしたい。
レッドマウンテンが、あなたを遠いアフリカの大地へと誘(いざな)ってくれるだろう。
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取材場所
本記事の取材場所は埼玉県越谷市下間久里(しもまくり)にある自家焙煎珈琲店・珈家(かや)。写真及びハンドドリップの動画は珈家のマスターの許可を得て撮影した。
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2024年11月4日。越谷市下間久里の自家焙煎珈琲店・珈家(かや)でコーヒー教室が行なわれた。内容の充実ぶりもさることながら、マスターの淹れるコーヒーに参加者全員うっとり。優雅な時間が流れた。
参考資料
本記事を作成するにあたって参考にした文献を以下に記す。
・成美堂出版編集部(2015)『珈琲の大辞典』成美堂出版.
・西東社編集部(2017)『極める 愉しむ 珈琲事典』西東社.