『ささやき』という本を52年ぶりにはじめて読んだ。

清水澄子『ささやき』

『ささやき』は、大正14年(1925年)、15歳のときに、家族に遺書を残し、鉄道に飛び込み自ら命を絶った信州・上田高等女学校の文学少女・清水澄子(しみず すみこ)が、生前書きためていた随想・短編小説・戯曲・詩・和歌などをまとめた遺稿集だ。
 
ボクが『ささやき』を知ったのは高校二年生ときだから52年前(昭和48年/1973年)になる。当時、短大生だった同級生のお姉さんの部屋の本棚で見つけた。
 
お姉さんが、「この本、気になる?」と言って、本棚から『ささやき』を取り出してくれた。「この作者はね……」と、話はじめたとき、お姉さんはお母さんに呼ばれて、買い物へ行ってしまった。
 
残されたボクは、手に取って、パラパラッとページをめくってみたが、そのときは、借りて読もうという気持ちにはならなかった。ただ、本の随所にあった「寂しい」という言葉だけが頭の中に残った。
 
その後、清水澄子のことは、すっかり忘れ、52年の歳月が流れた。
 
先月、2025年7月、読んでいた本の中に、清水澄子と『ささやき』について書かれた箇所があった。
 
なぜか無性に『ささやき』を読んでみたくなったので、古本を扱っている通販サイトで未使用(未読)の良本を見つけて購入した。
 
家に届いた本を手にしたとき、「やっと手にしてくださいましたね」と、耳元で、ささやく女性の声を感じた。
 
今年、2025年は、清水澄子が自ら命を絶って100年。その節目の年に『ささやき』を手にしたのは偶然だろうか……。



枯れてゆく
コスモス見れば
涙ぐむ
われの心もまた
枯れてゆく
 
清水澄子(享年15)