埼玉県春日部市西金野井の路傍にある篆書体(てんしょたい)で「青面金剛」と刻まれた庚申塔を調べた。調査した石仏を写真とともにお伝えする。場所は西金野井香取神社の北200メートルにある。
篆書体の文字庚申塔
庚申塔の造塔は、江戸後期・寛政7年(1798)
石塔の構成は、上部から「塔身」「台石上段」「台石下段」「基礎」。基礎の部分には、のし台が三段重ねられている。
主銘|正面
塔身の形式は駒型。正面の主銘は「青面金剛」(しょうめんこんごう)。篆書体(※1)で刻まれている。篆書体で「青面金剛」と刻まれているのが、この庚申塔の特徴。
※1 漢字のもっとも古い書体。隷書・楷書のもとになった。印章・碑銘などに使われる。
三井親孝
向かって左脇に「龍州 三井親孝 書 ㊞ ㊞」と刻まれている。
三井親孝(みつい・しんこう)は、江戸時代中期に書家・篆刻家として活躍した三井親和(しんな)の子で、名は孫三郎という。江戸後期・文化5年(1808)没。
側面
右側面の銘は「寛政七乙卯歳」「二月吉日」。左側面にも銘らしきものが刻まれているようにも見えるが、風化により、確認できなかった。
台石|上段
上段の台石は、正面を彫りくぼんで、三猿が陽刻されている。向かって左から「見ざる」「聞かざる」「言わざる」
見ざる
両手で目をふさいでいる見ざる。右向き。
聞かざる
両手で耳をふさいでいる聞かざる。正面を向いている。
言わざる
右手で口をふさいでいる言わざる。左向き。左手は尻を押さえている。
台石|下段
下段の台石。正面に刻まれている銘は、中央に「講中」(こうじゅう)、向かって右は「下総國葛飾郡」、左は「西金野井村」
側面
側面には、造塔した人ちの名前が刻まれているが、風化のために、ひとりひとりの名前は、はっきりと確認できなかった。
場所
庚申塔の住所は埼玉県春日部市西金野井1001( 地図 )。郵便番号は 344-0112。場所は、金野井香取神社の北200メートル、金野井揚水機場の南200メートルの路傍。庚申塔の裏手は江戸川。
参考文献
本記事を作成するにあたって参考にした文献を以下に記す。
日本石仏協会編『石仏巡り入門―見方・愉しみ方』大法輪閣(平成9年9月25日発行)
日本石仏協会編『新版・石仏探訪必携ハンドブック』青娥書房(2011年4月1日発行)