2025年4月9日。桶川市寿にある桶川稲荷神社の欅稲荷を参拝。満開のしだれ桜も見事だった。

桶川稲荷神社

桶川稲荷神社

桶川稲荷神社の創建はつまびらかでないが、社伝によると、鎌倉中期・嘉禄年間(1225年~1227年)の創建と伝えられている。
 
かつて、桶川宿が賑やかだったころ、「遊郭や飲み屋の女性たちが夕方、店に出る前に参拝する姿がよく見られ、その艶(あで)やかな姿を眺めようと、稲荷神社に足を向ける男性も少なくなかった」(※1)という逸話も残っている。

※1 『埼玉の神社』北足立・児玉・南埼玉(埼玉県神社庁)平成10年3月31日発行「桶川市・稲荷神社」573頁

欅稲荷

欅稲荷|桶川稲荷神社

鳥居をくぐった左手、道路沿いに、ケヤキの巨木が二本、立っている。奥のケヤキの幹に大きな空洞ができていて、そこに小さな稲荷社が祀られている。この稲荷社は「欅稲荷」(けやきいなり)と呼ばれている。

稲荷社

欅稲荷

神職さんの話によると、かつて(道路沿いにある)このケヤキの空洞に、空き缶やゴミを投げ入れていく通行人が絶えなかったので、苦肉の策として稲荷社を祀ったそうだ。
 
以来、ゴミ箱代わりにされていたケヤキの空洞は、お稲荷さまが守ってくださっているので、ゴミを投げ入れていく不届き者はいなくなったという。

しだれ桜

しだれ桜|桶川稲荷神社

ケヤキの横にあるしだれ桜(八重紅枝垂=ヤエベニシダレ)が満開を迎えていた。淡い桜色の花を枝いっぱいにつけた姿は、じつに妖艶(ようえん)

満開の八重紅枝垂

満開の八重紅枝垂

2025年4月9日撮影

境内の風景

続いて、境内の風景をさくっと見ていく。

鳥居

鳥居

手前は一の鳥居(石鳥居)。形は明神鳥居(みょうじんとりい)。奥は二の鳥居(木鳥居)。形は両部鳥居(りょうぶとりい)。朱色が鮮やか。神額には金文字で「稲荷神社」と彫られている。

社号標

石鳥居(一の鳥居)の脇には、自然石に「稲荷神社」と彫られた社号標が置かれている。

大磐石

大磐石

四本の柱に支えられた屋根の下に安置されている卵形の大きな石は「大盤石」(だいばんじゃく)と呼ばれている。
 
江戸後期・嘉永5年(1852)に、日本一の力持ちとうたわれた、岩槻領三野宮村(現在の越谷市三野宮)出身の三ノ宮卯之助(さんのみやうのすけ)が持ちあげて、奉納した。

稲荷神社の力石

稲荷神社の力石

大盤石と呼ばれる、この力石(ちからいし)は、重さ610キログラム。力石としては日本一重いとされ、「稲荷神社の力石」(いなりじんじゃのちからいし)の名称で、桶川市の文化財に指定されている。

力石(ちからいし)とは、

江戸時代から明治時代にかけて、力競(ちからくら)べや体を鍛えるために使われた石のこと。

桶川稲荷神社の境内では、「かつては近在の若者が娯楽として力競べや草相撲をした」(※2)という。

※2 『埼玉の神社』北足立・児玉・南埼玉(埼玉県神社庁)平成10年3月31日発行「桶川市・稲荷神社」574頁

紅花灯籠

紅花灯籠

社殿前にある大きな一対の石灯籠は「紅花灯籠」(べにばなどうろう)と呼ばれている。
 
江戸時代、桶川は紅花の栽培が盛んで、桶川宿では紅花商人たちが活躍していた。この石灯籠は、24人の紅花商人によって、江戸末期・安政4年(1857)に寄進されたもので、桶川市の文化財に指定されている。

社殿

社殿|桶川稲荷神社

桶川稲荷神社の祭神は宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと)。ウカノミタマノミコトは、稲荷神社のご祭神で、五穀豊穣と商売繁盛の神様として広く信仰されている。
 
桶川宿では「商売繁盛の神」として厚い信仰を集めてきた。

境内社

境内社

境内には、境内社が四社祀られている。

雷電社

雷電社

雷電社(らいでんしゃ)。雷除け、厄除けの神として知られる。明治9年(1876)に、桶川地区の「西」からここ「寿」に合祀された。

阿夫利社

阿夫利社

阿夫利社(あふりしゃ)。古くから雨乞いの神として知られる。

八雲社

八雲社

八雲社(やくもしゃ)。商売・防火の神様。西地区の旧中山道沿いにあった社が、ここに合祀された。

琴平社

琴平社

琴平社(ことひらしゃ)。商売繁盛・病気平癒・五穀豊穣などのご利益があるとされている。

神楽殿|白山社

神楽殿|白山社

神楽殿(かぐらでん)。明治40年(1907)に、桶川稲荷神社に合祀され、それときに移築された字西ノ浦(にしのはら)の白山社(はくさんしゃ)の社殿を神楽殿として使っている。

参拝情報

桶川稲荷神社

桶川稲荷神社の住所は、埼玉県桶川市寿2-14-23( 地図 )。郵便番号は 363-28971。場所は、旧中山道(埼玉県道164号)沿いにある東和銀行桶川市店斜め前の信号(丁字路)を折れて稲荷通に入り、二つ目の十字路を右に曲がってすぐ。車は境内東側の駐車場に駐められる。

関連記事

桶川稲荷神社の力石については、ボクが運営している別のブログ(越谷探訪)で記事にしてあります。

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参考文献

本記事を作成するにあたって、引用した箇所がある場合は文中に出典を明示した。参考にした文献は以下に記す。

参考文献

埼玉県神社庁神社調査団編『埼玉の神社(北足立・児玉・南埼玉)』埼玉県神社庁(平成10年3月31日発行)
外山晴彦・『サライ』編集部編『神社の見方』小学館(2007年7月15日 初版第6刷発行)
日本石仏協会編『石仏巡り入門―見方・愉しみ方』大法輪閣(平成9年9月25日発行)