埼玉県松伏町大川戸・まつぶし緑の丘公園西駐車場前を流れる水路沿いの路傍にある道標石塔を調べた。調査した石仏を写真とともにお伝えする。

道標石塔

道標石塔|松伏町大川戸

調査日は2025年7月26日。まつぶし緑の丘公園の西駐車場と水路(八間堀=はっけんぼり)の新設に伴い、歩道も整備されたが、歩道上の道標石塔は撤去されずにすんだ。

正面

道しるべ

道標(道しるべ)は江戸中期・明和2年(1765)造塔。石塔型式は駒型。

上部|不明仏立像

不明仏立像

正面の上部には立像仏(りょうぞうぶつ)が浮き彫りされているが、顔が欠損しているので、主尊の名前は判断しかねる。
 
合掌している地蔵菩薩にも見えるが、『松伏町史 文化財編』(※1)の調査報告に従って、主尊は「不明仏立像」(ふめいぶつりゅうぞう)としておく。

※1 『松伏町史 文化財編(石造物・絵馬・指定文化財)』松伏町教育委員会(令和6年3月22日発行)「石造物資料」(大川戸地区)340頁

下部|道標

道標|むかふ かすかべ道

下部の主銘は「むかふ かすかべ道」(向こう 粕壁道)。向こう(西)は粕壁(春日部)に至る道、の意。脇銘は「明和二酉年武州葛飾郡」「十一月吉日松伏領大川戸邑」

左側面

道標|むかふ こしがや道

左側面(向かって右側面)の銘は「むかふ こしがや道」(向こう 越谷道)。向こう(南)に行くと越谷に至る、の意。脇銘は「同行十五人」

右側面

道標|むかふ ほう志花道

右側面(向かって左側面)の銘は「むかふ ほう志花道」(向こう 宝珠花道=ほうしゅばなみち)。向こう(北)に行くと宝珠花に至る、の意。
 
宝珠花(ほうしゅばな)は、江戸時代、埼玉県北葛飾郡に属していた村で、この道標から北に 5キロほど進んだあたりにある。
 
現在の宝珠花は、江戸川をはさんで右岸側が西宝珠花(埼玉県春日部市)、左岸側が東宝珠花(千葉県野田市)
 
西宝珠花は、毎年、5月3日と5日に江戸川河川敷で開催される「春日部大凧あげ祭り」が有名。

まつぶし緑の丘公園

道標石塔

道標石塔の前の道は昔からある古道。うしろの水路は西駐車場の整備にともなって掘られた。かつて、まつぶし緑の丘公園の一帯は、田んぼだった。
 
昔の地図を見ると、古道を横切るように西から南東に水路が流れていて、古道と水路が交差する地点に、この道しるべが建っていたと思われる。

場所

道標|松伏町大川戸みどりの丘公園西用

道標の場所は、まつぶし緑の丘公園西駐車場のほぼ中央前の水路沿い路傍( 地図 )。まつぶし緑の丘公園西駐車場の住所は、埼玉県北葛飾郡松伏町大川戸2446。

参考文献

本記事を作成するにあたって、引用した箇所がある場合は文中に出典を明示した。参考にした文献は以下に記す。

参考文献

『松伏町史 文化財編(石造物・絵馬・指定文化財)』松伏町教育委員会(令和6年3月22日発行)
日本石仏協会編『石仏巡り入門―見方・愉しみ方』大法輪閣(平成9年9月25日発行)
日本石仏協会編『新版・石仏探訪必携ハンドブック』青娥書房(2011年4月1日発行)

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