埼玉県松伏町築比地(ついひじ)の北部サービスセンター交差点脇にある道標を調べた。調査日は2025年6月1日。石塔の上底面には盃状穴(凹み穴)が見られた。
盃状穴のある道標
石塔の場所は、野田岩槻線(千葉県道・埼玉県道80号)の金杉交差点と築比地交差点の中間地点。北部サービスセンター交差点の角地。上の写真の黄色い○(マル)印。
道標銘
石塔の四面すべてに道標銘が刻まれている。
正面
石塔型式は山状角柱型。造塔の年代は不詳。正面上部に、聖観音菩薩立像が浮き彫りされている。
下部|道標
下部(聖観音立像の下)は道しるべになっている。
「乃た」(のだ=野田)「か奈春ぎ渡道」(かなすぎわたしみち=金杉の渡し場に至る道)「な可れ山」(ながれやま=流山)
左側面|道標
左側面(向かって右側)の道標銘は、「な可さと」(なかざと=中里)「い者井道」(いわいみち=岩井に至る道)「さしま」(猿島)と刻まれている。
右側面|道標
右側面(向かって左側)の道標銘は、「江戸」(えど)「古し可や」(こしがや=越谷)「可春可へ」(かすかべ=春日部)「うおぬま渡」(うおぬまわたし=魚沼の渡し場)
背面|道標
背面には「本うしゆは奈道」(ほうしゅばな=宝珠花)の道標銘と、「講中」(こうじゅう)「拾一人」と刻まれている。
備考
この石塔に刻まれている道標銘は、現在の場所だと位置関係が一致しないので、もともとは別の場所にあったと思われる。
盃状穴
石塔の上底面には盃状穴(はいじょうけつ)と呼ばれる凹み穴が多数見られる。
盃状穴については諸説あるが、なんらかの目的で人為的に彫られたと考えられている盃状(さかずきじょう)の穴(凹み穴)で、石造物に多くみられる。呪術や土俗信仰と深くかかわっているともいわれているが、詳しいことはわかっていない。
魔除け(?)
これだけ多くの凹み穴が彫られているのは、なんらかの土俗信仰と関係していると思われる。もしかしたらこの道標は、もともとは村の入り口にあって、魔除けとして盃状穴が彫られたのかもしれない。
場所
盃状穴のある道標の場所は、野田岩槻線(千葉県道・埼玉県道80号)の金杉交差点と築比地(ついひじ)交差点の中間地点。北部サービスセンター交差点(押ボタン信号)の角地( 地図 )。上の写真の黄色い○(マル)印。
参考文献
本記事を作成するにあたって、引用した箇所がある場合は文中に出典を明示した。参考にした文献は以下に記す。
『松伏町史 文化財編(石造物・絵馬・指定文化財)』松伏町教育委員会(令和6年3月22日発行)
日本石仏協会編『石仏巡り入門―見方・愉しみ方』大法輪閣(平成9年9月25日発行)
竹内一忠『盃状穴(はいじょうけつ)探索ガイドブック』ヒカルランド(2024年4月30日発行)
外山晴彦『サライ』編集部編『野仏の見方』小学館(2003年6月10日発行)