ボクが子ども時代(昭和30年代)、氷水(こおりすい)と呼ばれたかき氷は、女性たちから圧倒的な人気を得ていた。母親も叔母も祖母も見知らぬおばさんたちも、かき氷といえば「こおりすい」だった。
氷水の隆盛
どういうわけか、当時(昭和30年代)、お店で「こおりすい」を注文するおばさんたちは、「白い帽子」をかぶり、「白い手袋」をして、扇子で顔をあおぎながら「今日は、こおりすいをいただこうかしら」なんて、言っていた。
この「白い手袋」「白い帽子」というのは、昭和のシンデレラと謳われ、ミッチーブームを巻き起こした、美智子妃殿下(現・皇太后)の服装、いわゆるミッチースタイルと呼ばれたファッションだ。
母親や叔母、見知らぬおばさんたちは、当時、お出かけというと、このミッチースタイルだったように記憶している。
氷水(こおりすい)の隆盛期、当時の女性たちは、美智子さまの透きとおるような美しさを、白く透明な「こおりすい」に重ね合わせたのかもしれない。
氷水の衰退
時代が移り、昭和40年に代入ると、ミッチーブームは去り、高度経済成長期を迎えた日本では、ミニスカートブームが巻き起こった。かき氷界にも新しいメニューが登場した。
当時、かき氷御三家として人気を独占していた「メロン」「レモン」「いちご」の牙城を揺るがす「ブルーハワイ」が登場。子どもたちの心をつかんだ。
宇治金時登場
さらに「宇治金時」が彗星(すいせい)のごとく登場した。
この「宇治金時」は女性たちの心をわしづかみにし、同時に、氷水(こおりすい)は、衰退の一途をとだった。
存亡を危惧した「こおりすい」は、「みぞれ」と名を変え、生き残りをはかったが、女性たちの「ココロ」が戻ってくることはなかった。
氷水に再び光を
ボクは、そんな氷水(こおりすい)に、かねがね同情の意を表わしていたので、このたび、あらためて、「こおりすい」を食べてみた。見た目は地味だが、味は素朴ながら甘さもすっきりしてじつにおいしい。
このまま、かき氷の歴史のかなたに埋没させてしまうのは、もったいない。
なんとか、再び、日の目を見せてやれないものか。
氷水(こおりすい)に再び光をあてるには、どうしたらいいのか、氷すい再生請負人として、ボクはそこんところをよーく考えてみた。
よーく考えた結果、「こおりすい」の致命的ともいえる二つの欠陥を見つけた。
漢字が地味
まずは漢字表記。「こおりすい」、漢字で表記すると「氷水」。ぱっと見て、「氷水」は「こおりみず」と読んでしまう。多くのヒトは、かき氷ではなく、水の入ったコップに氷を浮かべたものを想像してしまう。
「甘いシロップ」ではなく「ただの水」と思われてしまうという、この地味な漢字表記が人気衰退の一因だ。
見た目が地味
次に見た目。氷水(こおりすい)には、シロップがたっぷりかかっているのだが、透明なので、見た目は、ただのかき氷のように見える。この見た目の地味さが、インスタ映え時代には、致命傷となっている。
上の写真は、ブルーハワイと氷水(こおりすい)。見栄えのよさは一目瞭然だ。
みぞれあずき
あずきをトッピングして見た目をよくし、「みぞれあずき」とする、という手もあるが、それでは、氷水(こおりすい)から女性客を奪った宿敵ともいえる「あずき」の力を借りることになるので、できればそれは避けたい。
それでは、「こおりすい」(みぞれ)の地味なイメージを華やかなイメージにするにはどうしたらいいのか。
氷水・人気回復の秘策
ズバリ、その秘策は「改名」だ。
みぞれをゆづるに改名
ボクは、「こおりすい」(みぞれ)の地味なイメージを一新するべく、女性たちが思わずふり向いてしまうような名前に改名することを提案する。
同じ「氷の世界」で、女性から圧倒的な人気を博している氷上のプリンス、羽生結弦(はにゅう ゆづる)くんの名を借りて、「みぞれ」改め「ゆずる」にしてはどうか?
羽生結弦くんの透きとおるような美しさは、まさに「こおりすい」(みそれ)のイメージにピッタリだ。
羽生結弦くんは、このたび結婚してしまったので、女性の支持率が若干、下がるのは致し方ないが、「みぞれ」を「ゆづる」に改名することで、「羽生結弦詣」をする多くの女性たちを取り込めると思われる。
ゆずる詣で
「ゆづる」と改名した「新・氷水」に、女性たちが飛びつき、この評判を耳にした羽生結弦くんが、「ボクの好きなかき氷ですか? そうですねぇ……『ゆづる』かな」なんて、言ってくれようものなら、かき氷界に「ゆづる」旋風が巻き起こるに違いない。
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埼玉県松伏町にあるくず餅の名店・増田商店。夏場はくず餅は製造しないので、その間、かき氷をやっている。今風のかき氷ではなく昔懐かしのかき氷だ。値段も300円からとお手ごろ価格。同僚と食べに行ってきた。